「ピッチがずれてる気がするけど、直すべき?」 「タイミングがバラバラな気がする…これって大丈夫?」
歌ってみたを録音していると、自分の歌のピッチ(音程)やタイミングが気になりますよね。
結論から言うと、完璧に合わせる必要はありません。ただし、「どこまで気にすべきか」の基準を知っておくと、録音もMix依頼もスムーズになります。
- ピッチ・タイミングの基本
- 録音でやるべきこと・Mixで直せること
- ジャンル別のピッチ補正の目安
- 自分で直すか、Mix師に任せるかの判断基準

P!xL(ピクセル)
P!xL(ピクセル)
- Mixxx(当サービス)運営者
- 歌ってみた制作株式会社PXstudio代表取締役
- 一般社団法人日本歌ってみたMIX師協会監事
- ミキシングエンジニア歴:10年以上
- 過去Mix件数:2,000件以上
- 歌い手経験あり:3年程度
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ピッチ・タイミングとは?
まず、「ピッチ」と「タイミング」が何を指すのかを整理しておきましょう。
ピッチ(音程)がずれるとは
ピッチ とは、音の高さのことです。「ド」を歌うべきところで少し低い音になっていたり、高い音になっていたりする状態が「ピッチがずれている」状態です。
- フラット: 本来の音程より低い
- シャープ: 本来の音程より高い
- ピッチの揺れ: 音程が安定せずふらふらする
人間の歌は機械ではないので、多少のピッチずれは自然なことです。ただし、大きくずれていると「音痴」に聴こえてしまいます。
タイミングがずれるとは
タイミング とは、歌い出しや言葉の位置のことです。カラオケの歌詞表示より早く歌い始めたり、遅れて歌い始めたりする状態が「タイミングがずれている」状態です。
タイミングのずれも、わずかなものであれば問題ありません。むしろ、あえてずらすことで「ノリ」や「グルーヴ」が生まれることもあります。
意図的にタイミングを遅らせる「溜め」や、早めに入る「突っ込み」は、プロの歌手も使うテクニック。すべてをジャストに合わせる必要はありません。
録音でやるべきこと/やらなくていいこと
ピッチやタイミングの修正は、「録音時」と「Mix時」で役割が異なります。
録音時に意識すべきポイント
録音時に意識すべきことは、以下の3つです。
録音で心がけること:
- 大きくピッチがずれた部分は歌い直す
- 歌い出しのタイミングがずれたら録り直す
- 全体的に「70〜80点」の出来を目指す
「完璧な歌」を録る必要はありません。ただし、明らかにずれている部分は録り直したほうがいいです。
- 音程が半音以上ずれている
- 歌い出しが明らかに遅れている/早すぎる
- 自分で聴いて「気持ち悪い」と感じる
Mixで直せること・直せないこと
Mix工程では、ピッチ補正ソフトを使って音程やタイミングを修正できます。ただし、何でも直せるわけではありません。
Mixで直せる範囲と直せない範囲を比較してみましょう。
| 項目 | Mixで直せる | Mixで直せない |
|---|---|---|
| ピッチ | 半音程度のずれ | 1音以上の大きなずれ |
| タイミング | 微調整(数十ms) | 大幅なずれ(フレーズ単位) |
| 声質 | 多少の調整は可能 | 根本的な変更は不可 |
| ノイズ | 軽減できる | 完全除去は難しい場合も |
重要なのは、「Mixで直せるから録音は適当でいい」とは思わないことです。
大幅な補正をかけると、声が不自然になったり、音質が劣化したりします。録音時に「できる限りいいテイク」を録ることが、良いMixの前提条件です。
多くのMix師は「軽い補正で済むデータ」を歓迎します。大幅な補正が必要なデータは、仕上がりに限界があることを理解しておきましょう。
録音の基本については「歌ってみた録音ガイド」で詳しく解説しています。
ピッチ補正はどこまでやる?【ジャンル別の目安】
ピッチ補正の度合いは、楽曲のジャンルによって変わります。
バラード・感情系
バラードや感情を込めて歌う楽曲では、ピッチ補正は控えめにするのがおすすめです。
- 明らかにずれている箇所だけ補正
- ビブラートや揺れは活かす
- 「うまく聴こえる」より「感情が伝わる」を優先
過度なピッチ補正をかけると、感情表現が薄れて「無機質」な歌に聴こえてしまいます。多少のずれは「味」として残す判断も大切です。
ポップス・アップテンポ系
一般的なポップスやアップテンポな曲では、ある程度のピッチ補正は自然です。
ポップスの補正方針:
- 全体的に音程を安定させる
- サビは特に丁寧に補正
- ただし「ケロケロ」しない程度に
最近のJ-POPはピッチ補正が当たり前になっているため、ある程度補正をかけないと「原曲と雰囲気が違う」と感じられることもあります。
ケロケロ・機械系
いわゆる「ケロケロボイス」や機械的な声を目指す楽曲では、ピッチ補正を強めにかけます。
ピッチ補正を極端にかけることで生まれる、機械的な声の質感。ボカロPの楽曲やEDM系でよく使われる表現です。
この場合は、あえて「不自然」に聴こえるくらい補正をかけることで、楽曲の雰囲気に合った仕上がりになります。
タイミング修正のコツ
タイミング修正も、やりすぎると不自然になります。
「ぴったり」より「グルーヴ」が大事
タイミングをすべてグリッド(拍)にぴったり合わせると、逆に不自然で機械的な印象になります。
グルーヴとは:
楽曲が持つ独特の「ノリ」や「揺れ」のこと。人間らしい微妙なずれが、心地よいリズム感を生み出します。
特にR&B、ファンク、ジャズ系の楽曲では、タイミングの「ずれ」が重要な表現要素です。
あえて拍の裏で歌うことで、独特のグルーヴが生まれることも。「ずれ」と「グルーヴ」の違いを意識してみましょう。
修正しすぎると不自然になる理由
タイミング修正をしすぎると、以下のような問題が起きます。
修正しすぎの弊害:
- 機械的で冷たい印象になる
- 歌の「勢い」が失われる
- オケ(伴奏)と噛み合わない違和感
波形を見て「ずれている」と思っても、聴いて違和感がなければ修正しなくてOKです。視覚的な判断より、耳で聴いた印象を優先しましょう。
自分で直す?Mix師に任せる?
ピッチ・タイミング補正は、自分でやるか、Mix師に任せるかを選べます。
自分で補正するメリット・デメリット
自分でピッチ・タイミング補正を行う場合のメリット・デメリットを見てみましょう。
メリット:
- 自分の好みに細かく調整できる
- スキルが身につく
- 費用がかからない
デメリット:
- 専用ソフトが必要(Melodyne等は有料)
- 学習コストがかかる
- 客観的な判断が難しい
自分の歌を聴きすぎると「何が正解かわからなくなる」ことがあります。客観的な耳を持つのは、実は難しいことです。
Mix師に任せるメリット・デメリット
Mix師にピッチ・タイミング補正を任せる場合のメリット・デメリットです。
メリット:
- プロの耳で客観的に判断してもらえる
- 楽曲全体のバランスを見て調整してもらえる
- 自分は録音に集中できる
デメリット:
- 費用がかかる
- 細かい要望を伝えるのが難しい場合も
- 仕上がりのイメージを共有する必要がある
初心者には「Mix師に任せる」がおすすめです。
理由は、ピッチ・タイミング補正は「どこを直すか」の判断が難しいから。経験豊富なMix師なら、楽曲全体を聴いて適切な判断をしてくれます。
Mixで何が変わるかについては「歌ってみたのMIXとは?」で解説しています。
まとめ
歌ってみたのピッチ・タイミングは、「完璧」を目指す必要はありません。
- 録音時は「明らかなずれ」だけ歌い直せばOK
- Mixで軽い補正は可能だが、大幅な修正は音質劣化のリスクあり
- ジャンルによって補正の強さは変わる
- 初心者はMix師に任せるのがおすすめ
大切なのは、「完璧な録音」より「感情のこもった録音」 です。
多少のずれは気にしすぎず、まずは「歌いたい曲を楽しく歌う」ことを優先しましょう。補正はMixの段階でプロに任せれば大丈夫です。