「他の歌ってみた動画と比べて音が小さい気がする…」 「音圧を上げたいけど、どうすればいいの?」
歌ってみた動画をYouTubeに投稿するとき、多くの人が「音圧」について悩みます。
音圧は上げすぎても下げすぎても問題が起きます。この記事では、YouTubeに適した音圧の考え方と、よくある失敗パターンを解説します。
- 音圧とラウドネス(LUFS)の基本
- YouTubeのラウドネス規格(-14LUFS)
- 音圧調整でよくある失敗パターン
- 適切な音圧に仕上げる方法

P!xL(ピクセル)
P!xL(ピクセル)
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音圧とは?ラウドネスとの違い
まず、「音圧」と「ラウドネス」の違いを理解しましょう。
音圧の基本
音圧とは、簡単に言うと音の「迫力」や「聴こえやすさ」のことです。
同じ音量でも、音圧が高い曲は「パワフルで迫力がある」と感じ、音圧が低い曲は「おとなしい、物足りない」と感じます。
- 音が前に出て聴こえる
- 迫力がある
- 他の動画と比べて「負けない」印象
ラウドネス(LUFS)とは
ラウドネスは、人が実際に感じる音の大きさを数値化したものです。
単位は「LUFS」(Loudness Units relative to Full Scale)を使います。
- 数値が0に近いほど音が大きい
- 数値がマイナスに大きいほど音が小さい
- 例: -10LUFSは、-20LUFSより音が大きい
従来の「dB(デシベル)」は瞬間的な音量を測る指標でした。
一方、LUFSは曲全体を通して「人がどのくらいの音量に感じるか」を測定するため、より実用的な指標として使われています。
YouTubeのラウドネス規格【-14LUFS】
YouTubeには、動画の音量を自動調整する機能があります。これを理解しないと、意図しない音量で再生されてしまいます。
ラウドネスノーマライゼーションとは
YouTubeはすべての動画の音量を統一する処理を行っています。これを「ラウドネスノーマライゼーション」と呼びます。
- 基準値: 約-14LUFS
- -14LUFSを超える動画 → 自動で音量が下げられる
- -14LUFS未満の動画 → そのまま再生(音量は上げられない)
つまり、どんなに音圧を上げた音源でも、YouTubeでは-14LUFS程度に下げられるということです。
-14LUFSを超えるとどうなる?
「じゃあ音圧を上げてもYouTubeが下げてくれるから問題ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、それは違います。
- 音量は下げられるが、音質は戻らない
- ダイナミクス(音の強弱)が失われたまま
- 「平坦で聴き疲れする音」になる
- 結果的に他の動画より「聴きにくい」印象に
音圧を上げる処理は、音質を犠牲にして行われます。YouTubeが音量を下げても、失われた音質は戻りません。
歌ってみたの音圧調整でよくある失敗
初心者がやりがちな音圧の失敗パターンを紹介します。
失敗①: 音圧を上げすぎる
「他の動画より目立ちたい」「迫力を出したい」という理由で、音圧を極端に上げるパターンです。
よくある症状:
- 音が歪んでいる(割れている)
- 全体的にのっぺりして抑揚がない
- サビとAメロの差がなくなっている
- 聴いていて疲れる
かつて音楽業界では「音圧競争」がありました。より大きく聴かせるために、どんどん音圧を上げていった時代です。しかし現在は、YouTubeなどのプラットフォームがラウドネス規格を導入したため、音圧を上げすぎる意味がなくなりました。
失敗②: 音が小さすぎる
逆に、音圧が低すぎるパターンもあります。
よくある症状:
- 他の動画と比べて明らかに音量が小さい
- 迫力がなく、物足りない印象
- 視聴者がボリュームを上げないと聴こえない
YouTubeは-14LUFSより小さい音源の音量を上げてはくれません。
そのため、例えば-20LUFSで書き出した音源は、そのまま-20LUFSで再生されます。
適切な音圧に仕上げる方法
では、どうすれば適切な音圧に仕上げられるのでしょうか?
ラウドネスメーターで確認する
まず、現在の音源のラウドネスを確認しましょう。
無料で使えるラウドネスメーター:
- Youlean Loudness Meter(無料版あり)
- dpMeter(無料)
- NUGEN MasterCheck Free(無料)
DAW(音楽制作ソフト)のマスタートラックに挿入して、再生するだけでラウドネスが表示されます。
- YouTube向け: -14LUFS前後
- 少し余裕を持たせて: -13〜-15LUFS
- トゥルーピーク: -1dB以下
リミッターで音圧を調整する
ラウドネスが低すぎる場合は、リミッターを使って音圧を上げます。
リミッターの基本的な使い方:
- マスタートラックにリミッターを挿入
- 出力(Ceiling)を-1dBに設定
- 入力(Gain/Threshold)を上げていく
- ラウドネスメーターで-14LUFS前後になるまで調整
注意点: リミッターを強くかけすぎると音が歪みます。「少し音圧が足りないかな?」くらいで止めておくのがコツです。
- Limiter No.6(無料・高品質)
- Loudmax(無料・シンプル)
プラットフォーム別のラウドネス基準
YouTube以外のプラットフォームにも、それぞれラウドネス基準があります。
| プラットフォーム | ラウドネス基準 |
|---|---|
| YouTube | 約-14LUFS |
| Spotify | 約-14LUFS |
| Apple Music | 約-16LUFS |
| Amazon Music | 約-14LUFS |
| ニコニコ動画 | 規格なし(自己調整) |
歌ってみたの主な投稿先はYouTubeとニコニコ動画なので、-14LUFS前後を目安にしておけば問題ありません。
ニコニコ動画には公式のラウドネス規格がないため、YouTube基準で調整した音源をそのまま使うのがおすすめです。
「音圧調整が難しい…」という方へ
ここまで読んで、「やっぱり難しそう…」と感じた方もいるかもしれません。
音圧調整(マスタリング)は、Mixの最終工程です。ここまでにEQ、コンプレッサー、リバーブなど多くの処理を経て、最後に音圧を調整します。
- ボーカルの音量バランスが悪いと、音圧を上げたときに破綻する
- EQが適切でないと、特定の周波数だけ歪む
- コンプレッサーが適切でないと、音圧を上げても安定しない
つまり、音圧調整がうまくいかないのは、その前の工程に問題があるケースも多いです。
「録音に集中したい」「全部自分でやるのは大変」という方は、Mix依頼という選択肢もあります。プロのMix師は、適切な音圧調整まで含めて仕上げてくれます。
Mix処理の基本については「最低限必要なMix処理」で解説しています。
投稿前の最終確認については「歌ってみた投稿ガイド」も参考にしてください。
まとめ
歌ってみたの「音圧」とは、音の迫力や聴こえやすさを表す指標です。
- YouTubeのラウドネス基準は約-14LUFS
- 音圧を上げすぎると音質が劣化する
- 音が小さすぎるとYouTubeは上げてくれない
- ラウドネスメーターで確認、リミッターで調整
「音圧を上げれば良い音になる」わけではありません。むしろ、適切な範囲に収めることで、聴きやすい音源に仕上がります。
音圧調整を含むMix全体を任せたい場合は、プロへの依頼も検討してみてください。